こんにちは。「カロアの自分手帖」管理人のカロアです。
この記事では、公害防止管理者(大気一種)の試験科目「大規模大気特論」の頻出テーマである、乾燥断熱減率・大気の安定/不安定・温位の概念をわかりやすくまとめます。
以下のような悩みがある方におすすめです。
- 「乾燥断熱減率って何?なんで気温が下がるの?」
- 「安定とか不安定って何をもって判断するの?」
- 「温位ってどんな意味?試験でどう出るの?」
図解とともに、試験に出やすい要点を押さえてお伝えしていきます!
1. 乾燥断熱減率とは?
まずはこの式を覚えておきましょう。
dT/dz = -g/Cp = -γd
- dT:温度変化
- dz:高度変化
- g:重力加速度(9.8 m/s²)
- Cp:定圧比熱
- γd(ガンマ・ディー):乾燥断熱減率
この式が示すのは、「空気塊が1m上昇すると、温度は約0.0098℃下がる」ということです。つまり、乾燥空気は100m上昇すると、約1℃気温が下がるということを意味しています。
ここでのポイント:
- 乾燥空気(=水蒸気を含まない)の場合に限ります
- 水蒸気を含むと「湿潤断熱減率」となり、数値はこれより小さくなります
2. 大気の安定/不安定の判断方法
大気の状態が「安定」か「不安定」かを判断するには、以下の2つを比べます。
- 実際の大気の温度勾配(γ)
- 乾燥断熱減率(γd)=約0.0098℃/m
2-1. 【図A】γ > γd の場合(=不安定)

この図では実線が実際の大気の温度勾配γ、点線が乾燥断熱減率γdです。
- 実際の大気は、高度が上がるごとに温度が急激に下がっています
- 一方、気塊はγdに従って、比較的緩やかに冷却されます
そのため、気塊が上昇したとき(P0 → P1)…
- 周囲の空気より温度が高い → 密度が小さい → さらに上昇する(浮力が働く)
逆に下降したとき(P0 → P2)…
- 周囲の空気より温度が低い → 密度が大きい → さらに下降する
このように、気塊が上下に移動したとき、その動きが加速される状態を「熱的に不安定」といいます。
☑️ 試験での表現例
「気塊が上昇しても下降しても、周囲との温度差が拡大する → 不安定な状態」
2-2. 【図B】γ < γd の場合(=安定)

この場合、実際の大気はそれほど温度が下がっていません。
- 気塊が上昇(P0 → P1):周囲より温度が低くなる → 下降する
- 気塊が下降(P0 → P2):周囲より温度が高くなる → 上昇する
つまり、元の位置に戻る力(復元力)が働く状態。
これを「熱的に安定」といいます。
☑️ 試験での表現例
「気塊が上昇・下降しても元に戻ろうとする → 安定な状態」
2-3. γ = γd の場合(=中立)
この場合、気塊と周囲の大気の温度変化が完全に一致するため、浮力が働かず、移動が抑制も加速もされません。
このような状態を「熱的に中立」といいます。
3. 気温勾配グラフと紛らわしいポイント
試験でたまに出題される、紛らわしいポイントがあります。
- 式では「dT/dz(Tのzに対する変化量)」を使いますが…
- グラフでは「z(高度)」を縦軸、「T(温度)」を横軸に取るため、傾きが逆になることに注意!
つまり:
- グラフの傾きが緩やか(右に寝ている)→ γは大きい
- グラフの傾きが急峻(立っている)→ γは小さい
✅ 図Aのように傾きが小さい(寝ている) → γ大 → 不安定
✅ 図Bのように傾きが大きい(立っている) → γ小 → 安定
この点は設問でも問われることがあり、**「傾きの見方=温度勾配と逆」**と覚えておきましょう。
4. 温位(おんい)とその意味
**温位(potential temperature)**とは:
「気塊を1000hPa(地表近く)に断熱的に移動させたときの温度」
つまり、高さが違う空気の温度を比較できるように統一するための指標です。
温位勾配の式
温位の変化は以下の式で表されます。
dθ/dz = γd + dT/dz
ここで、dT/dz = -γd(乾燥断熱減率と一致する場合)だとすると…
- dθ/dz = 0 → 温位は一定 → 中立な状態
- 上空の温位が高い → 安定
- 上空の温位が低い → 不安定
温位は高度ごとの大気の安定度を把握するのに便利な指標であり、試験では温位分布や温位の変化量を問う問題も出題されます。
5. 試験対策まとめ:覚えるべきポイント
| 概念 | 状態 | γとγdの関係 | 気塊の挙動 | 温位の分布 |
|---|---|---|---|---|
| 不安定 | 上昇・下降で運動が加速 | γ > γd | 浮力で加速する | 上空の温位が低い |
| 安定 | 上昇・下降で元に戻る | γ < γd | 動きを抑制する力で戻る | 上空の温位が高い |
| 中立 | 変化なし | γ = γd | 運動維持 | 温位は一定 |
6. 最後に
この記事では、乾燥断熱減率・温度勾配・大気の安定性・温位といった、「大規模大気特論」の中でも特に混乱しやすい重要項目を、図解つきで解説しました。
✔️ 安定・不安定の判断には γとγd の大小を比較
✔️ グラフの傾きと式の傾きは逆になることに注意
✔️ 温位は「同じ条件で比較するための温度」指標
理解があいまいなままでは試験でひっかかる分野なので、この記事でしっかりと整理しておきましょう。
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この記事の筆者について
「カロアの自分手帖」管理人。化学系技術職として工場勤務をしながら、各種資格(電験三種・エネルギー管理士・公害防止管理者など)を独学で取得中。実体験ベースでの学習法・参考書レビューなどを発信しています。


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