🏭0. はじめに
工場勤務やエネルギー・化学系の技術職にとって、
「どの資格から取るべき?」「どれが仕事に直結するの?」と迷う方は多いですよね。
この記事では、
- 電験三種
- エネルギー管理士
- 公害防止管理者(大気・水質)
の3資格を実務目線で比較し、それぞれの特徴・難易度・活かし方を解説します。
🔍 1. 資格の概要と目的を比較
| 資格名 | 管轄・実施団体 | 主な目的 | 活かせる職場 |
|---|---|---|---|
| 電験三種 | 経済産業省(電気技術者試験センター) | 工場やビルの電気設備の保守・監督 | 発電所・変電所・製造業・ビル管理 |
| エネルギー管理士(熱・電気) | 経済産業省(省エネルギーセンター) | 省エネルギー推進、エネルギー使用管理 | 大規模工場・エネルギー管理部門 |
| 公害防止管理者(大気・水質など) | 経済産業省(産業環境管理協会)※環境省令にも関連 | 環境汚染防止、汚染物質排出管理 | 化学工場・環境分析・設備管理部門 |
🟢 ポイント:
電験=電気設備の保守管理(電気設備を管理)
エネ管=省エネルギーの推進(エネルギーを管理)
公害防止=公害発生を防ぐ(環境維持・公害防止のため大気や水質を管理)
→ それぞれ「管理する対象」が違うのが特徴です。
📘 2. 試験の難易度と合格率を比較
| 資格名 | 合格率 | 科目数 | 勉強時間目安 | 難易度レベル |
|---|---|---|---|---|
| 電験三種 | 15%程度 | 4科目 | 800〜1000時間 | ★★★★☆ |
| エネルギー管理士(熱) | 35%程度 | 4科目 | 300〜600時間 | ★★★☆☆ |
| 公害防止管理者(大気一種) | 25%程度 | 6科目 | 200時間程度 | ★★★☆☆ |
🟢 コメント:
電験三種は計算・理論の比重が高く、最も理系色が強くハードな試験。
一方、公害防止は化学・環境系中心、エネ管は実務寄りです。
公害防止は暗記する内容が多く、暗記課目が苦手な人にとっては取り組みにくい試験かもしれません。エネ管(熱)は熱力学や流体力学の基礎知識がある方にとっては少ない労力で合格を目指せます。
化学メーカー勤務の管理人の私見では、課長クラス以上の役職者はエネ管・公害防止の有資格者が多い印象※です。(加えて衛生管理者を持っている人も多いです) 管理職を目指すなら必要度が高い資格といえるかもしれません。※部門ごとに管理統括者や公害防止主任管理者を設けるためだと思います
なお、いずれの試験も課目合格制となっており、数年かけて計画的に取得を目指せます。
💡 3. 難易度よりも「役立つ場面」で選ぼう
| 資格名 | 現場での活用場面 | 役職・キャリア面 |
|---|---|---|
| 電験三種 | 工場の受電設備・変圧器・動力設備の保守 | 設備保全・電気主任技術者 |
| エネルギー管理士 | 省エネ提案、エネルギー原単位の管理 | 技術系管理職・エネ管理責任者 |
| 公害防止管理者 | 排ガス・排水・ばいじん測定・環境監査 | 環境安全部門・ISO対応担当 |
🟢 ポイント:
- 現場型 → 公害防止、電験
- 管理・改善型 → エネ管、電験
- 環境ISO・法対応型 → 公害防止
電気設備を管理する立場になりたければ電験、省エネルギーを推進したければエネ管、環境関係の対応をしたければ公害防止を取るのがいいです。必要な業務、取り組みたい仕事、あるいは会社の方針に応じて考えましょう。
📚 4. どの順番で取るべき?おすすめのルート
| 目的別 | ステップ例 | コメント |
|---|---|---|
| 工場でキャリアアップしたい | 危険物乙4 → エネ管 → 電験三種 | 電気設備・エネルギーの両輪で強い |
| 環境安全担当を目指したい | 危険物乙4 → エネ管→公害防止(大気/水質) | 安全衛生・環境部門で評価されやすい |
| 総合技術職として強くなりたい | 電験三種 → 公害防止 or エネ管 → 技術士一次 | 幅広く理解できる技術系総合職に最適 |
🟢 コツ:
まずは得意分野(電気・熱・化学)から始め、
将来的に横展開で他資格を取ると相乗効果が出ます。
特に得意分野などがなく、エネ管・公害防止・電験三種の資格を取得したい方は ①公害防止(大気・水質)→②エネ管→③電験三種の順で取得を目指すのがよいと思います。
公害防止(大気)とエネ管(熱)は燃焼に関する問題など、一部同じような問題が出る分野があり、勉強した内容を活かしやすいと思います。また、エネ管で勉強した内容は電験の電力課目と一部重なるところがあります。
💬 5. どれを取ると転職で有利?
| 職種・業界 | 有利な資格 | 理由 |
|---|---|---|
| 電力・エンジニアリング | 電験三種 | 国家独占資格で求人が多い |
| 製造・化学プラント | エネ管 or 公害防止 | 管理職・安全衛生ポジションで評価高 |
| ビルメンテナンス | 電験三種 + エネ管 | 資格手当+業務範囲拡大に直結 |
<(2025/10/27追記):転職サイトで「電気主任技術者(第三種)」「エネルギー管理士」「公害防止管理者」を調べてみました>
- 電気主任技術者 第三種(電験三種):535件ヒット。電気設備の保守管理の求人多数。年収500万~900万程度の求人が多い。
※「電験三種」でも61件ヒット。先の535件と合わせると596件ヒット。 - エネルギー管理士:561件ヒット。施設管理、プラントでの製造技術職の求人多数。年収500万~900万程度の求人が多い。
- 公害防止管理者:234件ヒット。プラントでの製造技術職の求人多数。年収500万~900万程度の求人が多い。
- 求人の数だけで考えると、電験三種≧エネ管>公害防止管理者となっている。
年収の差はそれほどなく、仕事内容は異なる。(エネ管と公害防止では仕事内容が近い印象)
✅ 6. 管理人のおすすめ順
管理人の主観ですが、結局どれがいいの?という方に向けておすすめ順を示します。
①電験三種:市場価値が高まる。社会的評価と需要の高さが随一。実務経験を積めば独立も視野に。
②エネ管:一定規模の工場で需要あり。化学・エネルギー業界への転職で評価されやすい。
③公害防止:環境系の仕事で役に立つ。
正直な印象としては、この3つの中なら電験三種の価値が頭一つ抜けて高いと思います。ただ、電気関係の仕事をしない方にとっては必要のない資格ですので、エネ管/公害防止を取得すれば十分です。(なお、エネ管と公害防止のおすすめ度の差はほとんどないと思っていますので、仕事の内容に応じてどちらを取るか決めればよいと思います)
🧭 7. まとめ:どの資格も「現場×理系」なら強力な武器になる
| 比較まとめ | 電験三種 | エネ管 | 公害防止 |
|---|---|---|---|
| 理系色(計算ボリューム) | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
| 現場対応力 | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
| 管理職・キャリア向け | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ |
| 学習負担 | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ |
🟩 まとめ:
どれか一つでも十分価値がありますが、現場→管理→環境の3ステップで資格を広げていくと、
“現場を理解できる管理者”としてキャリアに厚みが出ます。
個人的なおすすめ順としては①電験②エネ管③公害防止です。ただ、これは各人の専門性や志向によって変化するため、一概には言えません。「自分に最も合うのはどれ?」という視点が大切です。
✍️ 8. おわりに
3資格は「工場・技術職を支える柱」になりえる強い資格です。
それぞれの立ち位置を理解したうえで、自分の業務・将来像に最も近い資格から始めてみましょう。


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